万葉の武人の心を表す和歌「剣太刀」

「和歌」「剣太刀」は「大伴家持」が武人の魂を象徴する歌として詠んだそう。

日本の古典文化、特に武士文化と結びつきの深い『万葉集』にも関連している。

目次

大伴家持と和歌・剣太刀

大伴家持(おおとものやかもち)は、飛鳥時代から奈良時代にかけての最高の歌人であり、『万葉集』の編纂に深く関わった人物です。

(1) 武門の出自と「剣太刀」

大伴氏の役割:家持が属する大伴氏は、古代において朝廷の軍事・警護を担った強力な武門の家柄

武人の魂の象徴:刀や太刀は、武門の象徴であり、武人の魂そのもの

家持の和歌には、この「剣太刀(つるぎたち)」という言葉が、一族の名誉、誇り、決意を表す重要なモチーフとして登場する。

代表的な歌『剣太刀』

剣太刀 いよよ研ぐべし 古(いにしへ)ゆ さやけく負ひて 来(き)にしその名ぞ

現代語訳:武人の魂である剣太刀をいよいよ研がねばならない。我々大伴氏は、太古の昔から清く曇りなく背負い持ってきた、由緒ある名(家名)を持っているのだから。

この歌は、一族が不当な中傷を受けた際に、家名を守り、武人の本分を自覚し直す決意を詠んだものとされている。

(2) 「剣太刀」と和歌の情緒

「剣太刀」は、武門の歌だけでなく、恋の歌にも使用される。

「刃」という言葉が「名」の枕詞として使われるなど、古代の和歌における力強い情緒を表現する要素だった。

例:「剣太刀 諸刃(もろは)の利きに 足踏みて 死なば死なむよ 君によりては」
(作者未詳、君のためなら剣の刃の上を踏んでも死んでも構わないという激しい恋心)

剣太刀と剣舞・詩吟の現代的繋がり

「詩吟・剣舞」との現代的な繋がり

剣舞(剣太刀)のルーツ:現代の「剣舞」は、詩吟に合わせて刀(模擬刀・居合刀)や扇を持ち、詩歌の世界観を舞で表現する芸能。その演目のルーツには、当然ながら武士の精神が息づいている。

大伴家持の歌の吟舞: 大伴家持の和歌は、その力強さや情景描写の豊かさから、現代の吟剣詩舞(ぎんけんしぶ)の演目としてよく取り上げられる。

家持が国守を務めた越中(富山県)を題材にした「立山に」などの歌は、吟舞で演じられている。

【まとめ】

「剣太刀」は大伴家持武門の誇りを込めて詠んだ和歌である。

「剣太刀」が家名や決意を象徴する重要なモチーフとして登場する。

この力強い武人の和歌の世界観は、現代の「詩吟」や「剣舞」にも受け継がれている。

詩吟では、家持の歌をはじめとする万葉の歌や漢詩が題材とされ、詩の持つ力強い心や情景が声に乗せられる。

さらに、「剣舞」では、その詩の心(例えば、武人の決意)を、刀(剣太刀)や扇を使った舞で表現する。

それにしても大伴家持は奈良時代に大和政権に仕えた豪族だけど、いわゆる「武士」の大先輩のような存在なのかもしれません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次